3日目はダイヤモンドヘッドに登った。

ダイヤモンドヘッドは本当に素晴らしかった。これは想像以上だった。

 

ビーチから見えるダイヤモンドヘッドは薄茶色だが、近づいてみると、岩の隙間から草木が生い茂っていた。ワイキキビーチからトロリーに揺られダイヤモンドヘッドの登山口に着くと、そこには広大な芝生が広がり、開放感にあふれていた。

 

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1ドルの入山料を支払い、トレッキングコースへと向かった。ダイヤモンドヘッドは初心者にも登りやすいコースで、本格的なトレッキングの準備がなくても気軽に登ることができる。

 

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観光名所だけあり、途中で多くの人とすれ違った。ほとんどが観光客のようだったが、中には顔を真っ赤にさせながらトレイルランに励む地元のロコたちの姿もあった。

 

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コースの途中から見える景色も素晴らしかった。ダイヤモンドヘッドの中心部はクレーターのため窪み、外側だけが隆起している。その隆起した部分を登るのだが、上へと向かうにつれてその形状が大体わかってくる。

 

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30分ほど登り洞窟を抜け、最後の難関と言われる急な階段を越えた先が頭頂部だ。腰をおろしてじっくり景色を見ようと考えていたのだけど、それはできなかった。山の頭頂部のとんがった場所にぐるりと落下防止の手すりが囲まれ、人がすれ違えるかどうかのわずかな足場があるだけだったからだ。

 

がしかしその景色は圧巻だった。

 

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ただ単に美しい景色だけではない何かがそこにはあった。わたしはダイヤモンドヘッドの登頂で、初めてハワイが愛される理由がわかったような気がした。

ダイヤモンドヘッドから見える海は、優しく、すべてを許してくれているみたいだ。わたしを受け入れてくれている。景色を見てそんな気持ちになるのは初めてだった。

 

少し下ったところに人工的につくられた広場に腰掛け、あきることなく景色を眺め続けた。ここなら何時間でもいれる。それどころか毎日でも来たい。

 

この景色を見るのと見ないのでは、わたしの人生に決定的な違いがある。わたしは元来た道を下りながら今見た景色を反芻していた。

1日目に抱いたハワイの印象は、もうとっくに吹き飛んでいた。自然こそハワイの素晴らしさなのだと思った。

 

ハワイは色鮮やかだ。空の青、海の青、木々の緑の色が日本とは決定的に違う。自然はこんなにも鮮明な色をしているのかと驚く。

日本で見る自然の色はどこかグレーがかっている。それはわたしの心がそう見させているのかもしれない。

 

ハワイにいて、長い間落ち込むことは不可能なのではないかと思う。

ハワイに住み、落ち込んだら海を見つめ、思考に煮詰まれば山頂から壮大な景色を眺める。そんな毎日を送ることができたらどれほど幸せだろう。

日本の会社で、オフィスに閉じこもり、窓から見える空を眺めながら働く自分の姿を思い出して心寒くなった。人間は、どの環境に身を置くかですべてが決まる。そんな気がしてくる。

 

 

市街地へ戻り、2日目に見つけたワイキキビーチを一望できるオープンテラスのレストランへ向かった。せっかく旅行に来ているのだから新しいレストランを見つけたらどうかとも思うけれど、わたしはお気に入りの場所ができると、ついつい何度も足を運ぶ。

それは新しい場所を探すことが面倒くさいということもあるけれど、限られた日数だからこそ気に入った場所を何度も訪れたい。新しい店探しは、また次に来たときでいい。

 

そのレストランは比較的人通りの多い場所にあり、通りからもみつけやすいのにもかかわらず日本人の姿を見かけないのもよかった。たとえそれが観光客であろうと、外国人に囲まれているということが海を渡ってやってきたのだということを感じさせてくれる。

 

ちょうどサンセットの時間と重なり、そのレストランから素晴らしい景色を眺めることができた。

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ふと、ここでは誰もわたしのことを知らないのだなと思った。ここでわたしは無名の個人であり、何者でもないただの観光客だ。

わたしがどんな仕事をし、どんな功績を挙げ、どんなことを成し遂げたのか、また成し遂げようとしているのかなんてどうだっていいことだ。今自分がここにいる。ここに座って夕日を眺めている。それだけだ。

 

日本でのわたしは、有名になりたくて、何かを成し遂げたくて、何者かになりたくて必死だった。なにもない自分にいつも焦りを感じていた。

だけどそんなことどうだっていいじゃないかとハワイの自然が、人が、教えてくれる。

こんなにちっぽけで、何者でもない自分でいいじゃないかと気付かせてくれる。

それがわたしじゃないかと。

 

何を焦っていたんだろう?何に固執していたんだろう?カチカチになったわたしの思考がほぐれていく。

 

大切なことに気付かせてくれた3日目の夜が終わる。

 

 

続く