爆竹祭りの次の日は、里沙ちゃんと、バルセロナにサッカー留学をしているトモさんの3人でモンセラットへ行くことになっていた。モンセラットとは、 バルセロナらか電車で1時間ほど行ったところにあり、カタルーニャ語で「のこぎり山」という意味のギザギザした山のこと。


モンセラットはガウディが通ったパワースポットとして有名で、スペインを代表する重要な巡礼地でキリスト教の聖地。

ガイドブックによると、9世紀に建てられたモンセラット修道院と、そこに祀られている『黒いマリア像』が有名なんだとか。



わたしと里沙ちゃんを引き合わせてくれた大樹さん(仮名)が、絶対に行った方がいいよ!とおすすめしてくれた場所で、里沙ちゃんもずっと行ってみたかった場所ということで、この日を楽しみにしていた。







モンセラットへは、スペイン広場駅からカタルーニャ鉄道に乗って行くので、トモさんとスペイン広場に待ち合わせた。


待ち合わせより早い時間に到着したわたしと里沙ちゃんは、先に切符を買おうと券売機へ。それにしても、こっちの券売機での切符の買い方の複雑さといったらない。


モンセラットへ行くにはただ電車のチケットを買うだけでなく、山に登るためのロープウェイや、さらに上に登るためのケーブルカーの券もセットで買うことができるのだけど、セットの種類は無数にあり、一体どれがわたしたちの買いたいセットなのかまったくわからない。


途方にくれたわたしたちは、インフォメーションでどのチケットを買えばいいのか聞いた。丁寧に紙に書いて教えてくれたメモを持って再び挑戦するもやっぱりわからない。


かれこれ15分は券売機と格闘しているわたしたちの元に、黄色のウインドブレーカーを着た白髪のおじいさんが近寄ってきた。彼はわたしたちにどの種類のチケットが買いたいのか聞くと、瞬時にパネルを操作して、「これだよ」と購入画面を提示しれくれた。


まさに彼はヒーローだ。わたしたちが15分かかってまったくできなかったのに、ものの10秒で解決してしまった。彼が40歳若かったら恋していたかもしれない。


わたしたちのお礼を軽くかわして、券売機から10メートルも離れていない同じく黄色のウインドブレーカーを着た仲間の元へと彼は去って行った。













ん?





ちょっとまてよ?








同じく黄色のウインドブレーカーを着た仲間?











よくよく彼らを見てみると、どうやらこの駅の職員か何からしい。


にもかかわらず、彼らはだらだらとタバコをふかしている。仕事中にタバコかよ!


っていやいや、そんなのどうでもよくて…




あんたんたち…














































もっと早く手を貸せよ!
















黄色い団員1「おい、タバコくれ」

黄色い団員2「ほら。 あ〜早くシエスタ(昼寝)したい」

黄色い団員3「今日はパエーリャの日だから、早く仕事終わらせて家に帰って奥さんのパエーリャ食べたい」

黄色い団員1「おい、あの日本人ずっと券売機の前にいるぞ」

黄色い団員2「ほっとけば。自分たちで買えるだろ」

黄色い団員1「そうだな」


〜10分後〜


黄色い団員1「おい、まだあの日本人いるぞ」

黄色い団員2「ほんとだ。トロいな」

黄色い団員3「ロドリゲスじいさん、買い方教えてあげたら?」

黄色い団員1改めロドリゲス「めんどくさい。ルイス、お前が行け」

黄色い団員3改めルイス「僕だって面倒くさいって!ゴメスさんお願い」

黄色い団員2改めゴメス「い〜や。俺はシエスタするまで働かない」

黄色い団員1改めロドリゲス「はいはいわかった俺が行くよ」












……………っていう感じだろ絶対!絶対そうだろお前ら!ちゃんと働けっ!ヒーロー現る、なんて感動して損したわ!












しばらくしてトモさんがやってきた。始発駅であるスペイン広場駅には、すでにモンセラット行きの電車がいて、出発時刻を待っていた。



車内の乗客はまばらで、すぐに空いているコンパートメントをみつけることができた。席に座ってしばらくすると、インド系のまるまる太ったおじさんがやってきて、4人掛けの席のひとつ空いたシートに何かを置いて立ち去っていった。


なんだろうと思って見てみると、それはたばこ一箱と、自分と娘の写った写真に書かれたメッセージだった。


メッセージはスペイン語書かれていて、意味がわからないのでトモさんと里沙ちゃんに聞いてみると、インド人のおじさんには幼い娘がいて、彼女を育てていかなくてはならない。だからこのたばこを買って、わたしと娘にお金をください。


ということらしい。彼は停車している電車内の空席という空席にメッセージ付きたばこを置いて回っているようだった。




またもや新しい商売方法に出会ったぞ。「同情するなら金をくれ」戦法だ。僕にはこんなに幼い娘がいるんだ。この娘にひもじい思いをさせたくない。だからお願い、お金をください!


いや同情を誘ってお金をもらおうとする人たちは今までにもいたけれど、彼の場合、娘との写真という小道具まで用意しているところが新しい。





だけどちょっと待てよ。


電車内を歩き回りながらせっせとメッセージ付きたばこを配って回っているおじさんは、肌のツヤがよく何よりまるまる太っている!娘を食わす金がないどころか、栄養がありあまるほど食べてる証拠じゃないか!



そのことをトモさんと里沙ちゃんに言うと、「この娘との写真も同情を引くためのウソかもしれないね。本当は近所の子と撮ったのかも」という話になった。


というのも、バルセロナ在住のふたりは、物乞いをしていたおじさんがお金をもらったあと、普通にキレイなアパートの中に入っていったりなど、「生活が苦しいふりをして」同情を集めてお金を稼ぐ人の姿を目にしたことがあるらしいのだ。


なるほどそう言われると、あの太ったインド人のおじさんも本当は娘がいないのに、娘がいるからとウソをついて同情を引いてお金を稼いでいるのかもしれない。





まあとにかく、世界にはいろんな方法でお金を稼ぐ人たちがいるもんだ。【バルセロナ5日目】バルセロナの人々の生きる力とたくましさ。 にも書いたけれど、本当に彼らの生きる力はすさまじい。日本人だったら、そこまでできないよってことも、彼らは平気でやってのける。


日本人的には、「同情を引いてお金を稼ぐなんて!」「ウソついてお金を稼ぐなんてありえない!」ってことになりそうだけど、わたしはおじさんの人懐っこい笑顔がどうにも憎めなかった。もはや「すごいなあ。こんな小道具まで用意してよくやるなあ」と感心してしまった。







そんなこともありつつ、あっという間に駅に到着。ロープウェイに乗り換えて、モンセラットを目指す。






ロープウェイの中ではしゃぐ。

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ロープウェイを上った先には、美しい修道院が立ち並んでいる。キリスト教の聖地となっているモンセラットは、自然と人工が共存した素晴らしい場所。





ちょうどミサの時間だったので、教会の中に入ることができたのだけど、この教会がとても美しい。サグラダファミリアやカテドラルも美しかったけれど、モンセラットの教会は圧巻。この教会を観れただけでも、来て良かったと思える。






神々しいを浴びながら写真撮影。
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美しい教会を見ることができて満足だけど、わたしたちの真の目的はこれじゃない。ケーブルカーでさらに上に上り、展望台のあるサンジョアンで美しい景色を見ることなのだ!



さっそくケーブルカー乗り場へ。見上ると、とんでもない傾斜を上っていることがわかる。そそり立つ壁に向かう気分。





乗ること数分でサンジョアンに到着した。これから美しい景色を求めてハイキング!


サンジョアンにはいくつかのハイキングコースがあり、大人も子供もみな軽装でハイキングを楽しんでいる。わたしたちは40分コースを選んで歩き始めた。


登るにつれて、見える景色が美しくなってゆく。

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モンセラットの山々は広大で、ハイキングコースはどこまでも続いている。まだまだ先を観てみたいという欲求から、わたしたちはどんどん先へ進んだ。







どんどん先へ。

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どんどん先へ。

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……













………


























やばいこれめっちゃしんどい。







だって見てよこれ!この岩の横の切り込み!ここもコースなんだよ!ここも歩くんだよ!こんな上まで登っていくんだよ!

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しかもふたりともめっちゃ早いんだよ!なんでそんなに早いんだってくらい早いんだよ!体力ありすぎだよ!わたしは5メートルくらい遅れをとって歩いてるよ!











なんかもうさ、

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みてよこの顔

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どうなのよこれ

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全然笑えない。








毎日サッカーのトレーニングで鍛えているトモさんはわかるとして、険しい道ももろともせず、すいすいと進んでいってしまう里沙ちゃんは一体何者?!もう本当にすごい。わたしの体力がないだけか?いやいや、それにしたってふたりの疲れなさっぷりはすごい。



5メートルも後ろから、あまりにふらついた足取りで歩いているわたしを、おばあちゃんを介護するかのごとく優しい目でトモさんが気にかけてくれて、本当におばあちゃんになったような気分だった。














40分のハイキングコースから、さらに道無き道を行き、1時間半後、やっとスタート地点に戻ってきた。


一息ついていると、里沙ちゃんがおろどくべきことを口にした。




















もうひとつのハイキングコースも行ってみよっか。





































































死にそうになりながら登った先で食べたごはんは最高においしかった。

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なにはともあれ、貴重な体験ができてうれしかった。大変な思いをした思い出ほど深く残るというのは本当だなあ。ハイキングコースはいくつもあるので、また再挑戦したい。(体力をつけてから!!!)




続く。



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