ファームへと帰ってゆくかずきさんを見送って、あっきーは仕事へと戻っていった。残ったなおえとわたしは、なおえの家へ行くことになった。
なおえは大学を休学してワーホリに来ている、現役の大学生だ。めちゃくちゃ元気でファンキーだけど、考え方がしっかりしていて、とても5つ下とは思えない。なんなら、わたしよりもシッカリしているかも。
ワーホリ生活はどんな感じか、日本ではどんな生活を送っていたのか、過去のこと、将来のこと、恋の話など、話題はつきなかった。
なおえが通っていた語学学校は、ブラジル人やコロンビア人が多かったらしい。そういえばなおえの誕生日パーティーに、ブラジル人とコロンビア人が何人か来ていた。
なおえいわく、ブラジル人男性は女性の扱いがとてもうまいらしい。わたしはあまりブラジル人と関わったことがなかったので、へえ〜そうなんだ〜と聞いていた。
「だって彼らはセックス命だからね!」
そ、そうなんだ…。知らなかった…。
どうやらブラジル人は、セックスしたい一心で女性を誘う方法や、女性の扱い方に日々磨きをかけているらしい。素晴らしい国民性だわ…。日本人も少しくらいは見習うべきかもしれない。
夜はなおえのいきつけのバー、「ベガス」に飲みに行くことにした。なおえは自らを「アルコホリック」と称するほどの酒好きで、「このお店は水曜ビールが半額で飲める」「この店は金曜ワインが安く飲める」など、サーファーズパラダイス周辺の飲み屋のことを知り尽くしていた。
その日はベガスがワインが安い、ということでベガスへ行くことになった。
安く飲める日なのにもかかわらず、まだ早い時間だったからか、店内は空いていた。カウンターで注文し、わたしたちはテラス席で飲むことにした。しばらくすると、マリファナの匂いをぷんぷんさせた、ちょっと目がヤバい男が声をかけてきた。
なおえは英語が堪能なので、対応を任せることにした。めちゃくちゃめんどくさそうな顔をしながらも、英語で何かを言って、あしらおうとしてくれた。けれど男はしつこい。業を煮やした(?)なおえは、男の質問に驚きの回答をした。
ナンパ男:ところで君たち何人なの?
なおえ:ブラジル人だけど。
わたし、知らぬ間にブラジル人になったみたい。
わたし:(小声で)ちょ!なんでブラジル人?
なおえ:日本人って言うとなめられるから。
はあ〜さすが。色々と慣れてるわ。ますます年下だとは思えない。
めでたくナンパ男が去ったので、わたしたちは話しを続けた。わたしの旅の話になったとき、またもやなおえの口から年下とは思えぬ発言が飛び出した。
ちゃんとコンドーム持ってる?世界回るんなら持っておかなきゃ!
は、はい。すみません、先輩。
あーほんとおもろいわ、なおえ。
その後、なおえの家に戻ると、なおえはあったかいスープをつくってくれた。料理上手で、手際がよくて、味もすごくおいしい。もはや母ちゃんか?
久しぶりに食べる、日本食のやさしい味付けに、胃も心も大満足だった。
つづく。