サグラダファミリアを見学し終えてぷらぷらしていると、正面にある公園でアイスを売っている屋台を見つけた。サグラダファミリアに入る予約に間に合うためにダッシュして疲れていたので、アイスでも食べてちょっと休憩することにした。
お店は縦長のつくりになっていて、手前のカウンターではアイスを、奥のカウンターではジュース的なものを販売していた。店員さんは2人いるものの、向こうのカウンターにかかりっきりで、アイスの方には誰もいなかった。一応声をかけておいたので、手が空き次第こっちへくるだろうと思ってアイスを選びながら待っていると、何やら騒がしい声がする。
出た。中国人だ。
ひとりの中国人のおばさんが、向こうの方にいる家族らしき人たちと大声でやりとりをしながらやってきた。そして先に並んでいるわたしなど存在しないかのように、順番を完全に無視してカウンターに乗り出し、大声で店員を呼びつける。
店員さんがやってきて、「手が空くまで待ってて」と言って奥の方へ戻っていくのも気にせず、今度はコインをガラスケースに「カンカンカンカン」と何度も当てて呼び出す。
うんざりした顔で店員さんがまた来て「だから待っててってば」と言っているにもかからわず、「チョコレートアイス頂戴!あとストロベリーもね!」と相手のことなんて全く気にせず注文を口にする。
「Hey hey hey, hold on, hold on!」
あまりの身勝手ぶりに、うんざりを通り越して呆れ顔の店員さん。
一言一言はっきりと、「手が、空くまで、少し、待ってて。OK?」と言い残し、再び奥へ戻る。
「カンカンカンカンカンカンカンカン」
すぐにまたガラスケースをコインでたたくおばさん。
イライラした顔で店員さんが来る。
「Calm down, calm down!」ちょっと落ち着けって、と店員さん。
「チョコレートとストロベリーアイスを頂戴ってば!」とおばさん。
もはや店員さんは、明らかに不審者を見る目でおばさんを見ている。おばさんはそんなの知ったこっちゃないとばかりに注文を繰り返す。両者譲らない戦い。
って、あれ?
わたしのこと忘れてねぇ?
わたしはおばさんに向かって、
「あのね、あなたの視界には入っていないかもしれないけれど、わたしが先に並んでたんですよ。だからね、店員さんの手が空いたら、わたしのアイスを先に作ってもらわなければならないんですよ。
あなたはわたしの後からやってきたんだから、おとなしくわたしの後ろに並んでなさいよ!」
とまくしたてる英語力はないので、たった一言。
「I'm First!」
険しい剣幕で伝え(それでもおばさんはなかなか譲らなかったのだけど)、最終的にはおばさんを横へ追いやり、無事、わたしはアイスをゲットできたのでした。
フンっ!中国人のおばはんに好き勝手させるかっ!きちんとルールは守ってもらいます!強引さに押されて泣く泣く順番を譲る…なんて絶対しないからね!日本人だからってなめんなよ!(←違うかw)
鼻息荒くアイスを受け取って、ベンチに座って食べた。
鼻息の荒さが通常に戻ったころ、里沙ちゃんと合流した。わたしはバルセロナではまだ海を見ていなかったので、連れて行ってくれた。
海を眺めながら、バルセロナについてのいろんなことを聞いた。
とにかく人が明るいこと。生命力に溢れていること。
他人の子どもでも、悪いことをしたらきちんと叱る「正しい優しさ」を持っていること。
学校の先生も、そういった正しい優しさを持っているので、両親は安心して子どもを任せられるということ。子どもたちも、先生のことを尊敬しているということなど…。
わたしは日本が好きだけど、疑問に思う部分も多い。その中のひとつが「教育」なのだけど、スペインの教育と日本の教育、どちらがいいかは別として、里沙ちゃんの話を聞いて、スペインの教育から学ぶべき点はたくさんあると思った。
それにしても、世界のいろんなところへ行き、いろんな人と話していると、たくさんの違う価値観に出会うことができる。 それは、旅での楽しみのひとつだった。
外国人に話を聞くのも素敵だけど、海外に住む日本人から、同じ日本人としての価値観を持った人から見た海外の様子を聴けるのも、すごく興味深いと思った。日本を知っているからこそ、海外に住んでみて、その国の良さや日本の良さがわかる。バルセロナに住む里沙ちゃんの意見を聴けるのが、すごくうれしかった。
里沙ちゃんとわたしは、同い年で同じ市出身と共通点が多く、会って2日目にもかかわらず、話が尽きることがなかった。どれだけでも語り合った。
本当に、世界にはどんな出会いがあるかわからない。旅の醍醐味は出会い。美しい景色を見ることや、海外ならではのアクティビティに参加することももちろん楽しいけれど、やっぱり出会いにはかなわない。
日本にいたら会うことができなかった人とこうやって出会い、同じ時間を共有していることがうれしい。偶然の出会いだけど、出会ったのは必然だとしか思えない。すべての出会いにそう感じるけれど、里沙ちゃんとの出会いは特別そう思った。きっとこの先何年も関係は続いていくんだろうと自然と思えた。
帰りにスーパーに寄ってビールやつまみを買い込み、里沙ちゃんのお宅に戻って晩酌タイム。里沙ちゃんのかわいい息子くんたちとも仲良くなれて、明日一緒にお出かけする約束をして、その日は里沙ちゃん宅のゲストルームで眠った。
つづく。
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